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「鶴の恩返し」と競争条件の「不公平」 大谷 清

株式再上場が認められた日本航空に対して自民党の一部の議員が「(ANAとの)競争条件が不公平な状態のままで上場を認めるのはおかしい」と批判を続けていると報道されている。公表された経営数字からJALとANAを比較する限り、ルール上の「不公平」はどこにも見当たらない。一体、「不公平」論者は会社更生法や繰越欠損金の税控除制度など法務・税務の一般ルールそのものを「不公平」と訴えているのだろうか。

LIBOR不正事件と廉直さ(integrity) 大谷 清

LIBOR不正操作問題で指弾されている某グローバル金融グループの発表文に、思わずうなってしまった。「・・・社員の献身的な努力にもかかわらず、規制当局の期待にこたえられなかった・・・」。どう読んでも不正を認めたとしか受け取れないアナウンスだが、なぜかいささかも頭を下げている感じがしない。むしろ社員をいたわっている感じすら伝わってくるから妙だ。

「演劇批評」型報道とメディアのガバナンス 大谷 清

ジャーナリズムは「theater criticism」に陥りやすい、と喝破したのはポール・クルーグマン教授だった。米国大統領選を引き合いに出して「選挙」「政局」の行方をあれこれ占う報道ばかり多くて候補者の「政策」の地道な検証が少ない、と警鐘を鳴らした。最近のオスプレイの配備・事故報道などもその例外ではない。メディア各社は、読者にその判断に必要で有益な情報を届けるという目的に沿って報道がされているかを検証する機関を持っている。にもかかわらず一向に「演劇批評」型がなくならないのは残念な限りである。

日航の再上場と「鶴の恩返し」問題 大谷 清

日本航空の9月再上場を前に、一部の政治家から地方路線の復活などを求める声が出ているようだ。国が再生を担った以上、被害をこうむった地方に「恩返しすべし」との理屈らしいが、会社更生法の趣旨を履き違えた乱暴な議論だ。民間企業としての日航がすべき「恩返し」はスリムで収益力の高い持続力ある企業として復活し、顧客に安全で便利な運行を提供し、雇用の拡大や国、地方への納税など、本来の企業経営を通じて社会に貢献していくことだ。

社外取締役は番組掛け持ちのタレントではない 大谷 清

東京電力の社外取締役候補として、すでに数社の社外取締役を兼務している人材が起用される。東電だけでなく、複数の上場企業の社外取締役を兼任する人をさらに平気で社外役員に招く企業がある。社外取締役は片手間で担える職責ではない。日立製作所は「兼務は4社まで」、とする指針を作ったと報道された(日経)が、日本企業の国際競争力を担保するために、一人で何社もの社外取締役を兼任するという、行き過ぎた兼任を規制すべきときだ。

ソニーの新しい取締役体制とサムスンのガバナンス 大谷 清

ソニーが社外取締役を減らし、home grownの取締役の数を増やす。社外に依存しすぎた取締役体制を微修正する動きだろう。ライバルのサムスンは米国型のガバナンス体制を、賢明なオーナー経営者の手で上手に運用し、成長を続けている。ソニーの新しい取締役体制とその運用が再建への一歩になることを期待したい。

ハーバード大学のガバナンス改革と東大の秋入学 大谷 清

ハーバード大学が1650年の創立以来といわれる大規模なガバナンス改革を進めている。卒業生を中心とした外部の関与を質、量ともに増やし、圧倒的な国際競争力をさらに強めようという狙いらしい。私立と国立(大学法人)という違いはあるが、東大も秋入学ぐらいの改革だけではとてもワールドクラスの大学には追いつかない。

委員会設置型ガバナンスとビッグネームの落とし穴 大谷 清

経営と執行を分離した米国型ガバナンスをいち早く導入して成長を目指したはずのソニー。しかしその下で選んだストリンガーCEO時代は、結果として期待はずれのパフォーマンスに終わった。ガバナンスの形を変えただけでは企業は成長しない。ビッグネームを社外取締役に並べるだけでは十分ではない。その企業に深い愛着を抱き、成長へ並々ならぬ情熱を注げる社外役員を探し出せ、というのが市場の切実な声ではないだろうか。

ホームズ判事の言葉と最近の「著名事件」 大谷 清

「Great cases make bad law」--- 米国最高裁のホームズ(Oliver Wendel Holmes Jr.)判事の名言である。大事件はメディアの報道などを通じて人々の異常な関心を引きつけ、感情に作用して判断を歪め、時にはそれまで明確だった法の原則までもが曲げられてしまう。20世紀初頭の知性はすでに大事件後のポピュリズムへ警告を発していた。

世界で最も価値のある会社Appleとガバナンス 大谷 清

ウォルター・アイザックソン氏のベストセラー「Steve Jobs」によると、時価総額世界一に躍り出たApple社の取締役会は、強烈なカリスマ経営者に導かれた、米国や日本の常識に照らせばきわめて特異で例外的なガバナンスだったようだ。

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一般社団法人実践コーポレートガバナンス研究会

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